海を知り、体験することで「人」は多くのことを学びます。
現在『海と自然の体験学習協会』では、青少年及びそれに関わる保護育成者に対して海洋知識の増加及び理解を促進するとともに質の高い学習の場を提供しつつ、海洋環境の保全活動をも行うことにより、「海と自然の体験学習」の普及、育成促進に勤め、青少年やそれを取り巻く保護育成者との関わりの増進を図り、健全な青少年の育成及び広く社会に貢献することを目的として活動しています。
| 「最近、海が変だ」。ダイビング愛好者から、そんな話をよく聞く。「以前は出会うだけでもうれしかった美しい南方系の生き物が、ザラに見られるようになって、ありがたみがなくなった」という。このところの温暖化の影響で、陸上では北上を開始した生物の例がいくつも報告されている。目につきにくい海の中でも、同じような生態系の変化が始まっているのだろうか―。 |
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「ここって沖縄だったっけ?」。この7月、和歌山・串本の海に潜った水中写真家の伊藤勝敏さんは、わが目を疑った。そこかしこのサンゴに、オニヒトデがはりついていた(@)。
紀伊半島沖はオニヒトデの分布域の北端。本来、そんなに多数いるものではない。
NPO・海と自然の体験学習協会代表理事の藤本浩さんは「一昨年あたりから姿が目立ち始めて、今年の夏前からは異常発生という感じになっています。3年程度生き続けている30センチ級の巨大固体も珍しくなくなりました」と話す。
和歌山県立自然博物館と連携した伊勢半島近海の海中生物調査に、伊藤さんとともに当たっている。
紀伊半島近海のサンゴには、数年前からヒメシロレイシガイダマシという小型巻き貝(A=矢印)による食害が発生し、駆除が始まったところだ。そこへ、オニヒトデという新たな大敵の登場。食べられて死に、白く抜けてしまったサンゴが急に増えてきた(B)。
ヒトデ類を好んで食べる天敵のホラガイ(C)もいる。40センチにもなる大きな貝だ。しかし、ホラガイ自体が絶滅を心配されている状況では、大発生に対応できるとは思えない。
沖縄で行われているように、1匹1匹捕まえて駆除していくことになるが、オニヒトデのトゲには毒がある。さらに、下手に体を切断すると、双方が生きながらえてかえって個体数を増やしてしまいかねない再生力を持つとあっては、その作業も慎重を要する。
「南の海の生き物は、卵や幼生の形で、毎年、無数に黒潮で運ばれてくる。オニヒトデもその典型。紀伊半島に定着できるかどうかは、冬場の海の温度次第。低ければ死に絶え、高ければ高いほど居着く可能性が高くなる」
サンゴの研究者で、現在は串本でダイビングインストラクターをつとめる福田照雄さんの説明だ。このところの串本沖合の冬の水温は16~17度。最も低かった80年代の半ばに比べると、3度ほど高い。
オニヒトデの大発生は、今年になって九州や四国でも報告されている。
紀伊半島付近では、「希少な貝」とされてきた、本来は南方産の大型美麗なヒレジャコ、トウカムリなどの目撃例も増えている。寒さに強い在来のサンゴが、成長の速い新参の南方種に置き換わり始めたとの指摘もある。
「何かが起きている」のは間違いなさそうだ。
北限の更新続々
日本からは始めて発見される南の生き物、これまでに知られていた分布の北限を大きく更新した種……。ここ数年、そうした報告がにぎやかだ。
伊藤さんの体験でも、たとえば、串本町田子海岸の水深3メートルで見つけた、熱帯性のダンダラウニの仲間は、沖縄も含めて、日本の海ではまったく記録のないものだった。まだ、正式な和名も決まっていない。
静岡県・大瀬崎の深さ20メートルの海底で発見したヒオドシウニ(D)も、これまで紀伊半島沖などでわずか数回の捕獲例があるだけ。写真が紹介されるのは、おそらく今回が初めてだ。
ほかにも、日本近海でのヒトデの最大種として有名なオオフトトゲヒトデは、何と、日本海側の山口県萩市の見島沖で見つかった。
しかも、直径70センチと最大級の固体。ここで今年も冬を越せるか、定着するのか、今後が注目されている。
「青」が鮮やかなアオヒトデ(E)は、ずっと紀伊半島近海が分布の限界とされてきたが、このところ八丈島や伊豆大島の海にも出没するようになっている。
不確実ながら、伊豆半島沖で見たという話もある。
ウニやヒトデの仲間に詳しい三重県松坂市の佐波征機さんは「最近のダイビングブームで、海の生物を観察する『目』が一気に増えた。その効果はあるにしても、目を見張るような記録がこう次から次に出ると、海の生き物にも温暖化の影響が出てきているのは間違いないでしょう」と話す。
もっとも、オニヒトデなどは以前から周期的に大発生を繰り返す、といわれてきた。黒潮の流れが、陸から遠いか近いかといった問題も、生態系の変化に大きな影響を及ぼす。結論を急ぐよりも、今はまだ、地道な観察を積み重ねることが必要なようだ。
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