イソギンチャクと共生する
〜螺鈿細工の様に美しい文様 マルガザミ〜
螺鈿細工のように美しい文様に海中で出会った。甲羅の長さ2センチくらいの小さなカニが、フトウデイソギンチャクの「口」の上で向き合っているのだ。カップルだろうか。そのまま下に落ちれば餌になってしまうのに。なんとも危険な場所で愛を語るものだ。マルガザミと呼ばれるこのカニは、ソフトイソギンチャクの近くでしか目にしない。両者は「共生関係」にあるという。毒のある触手を広げて獲物を待つイソギンチャクに、身を守ってもらっているのだ。足元にいるのはよく見るが、こんな風に体の上に乗っかっているの姿は初めて見た。
共生というと互いに助け合って生きることだ。しかし、マルガザミがフトウデイソギンチャクにどのような恩恵を与えているのかよくわからない。こうした関係は、特に「片利共生」と呼ばれている。
マルガザミは共生相手にフトウデイソギンチャクを選び、進化の過程で毒の免疫を獲得してきた。なぜ、このイソギンチャクを相手に選んだのだろう。理由があるのだろうか。できることなら教えて欲しいものだと思いながらシャッターを切った

和歌山県串本町沖 水深22メートル


環境知るバロメーター
〜海のカリフラワー 八放サンゴ〜
写真はカリフラワー野菜を鮮やかにしたように見えるが、八放サンゴのトゲトサカ属の1種だと、トサカ類の研究者・今原幸光(和歌山県立自然博物館)さんはいう。トゲトサカの仲間は日本周辺から100種近くも記録されているが、色と形態の変異が多いため判別がきわめて難しいらしい。
からだは、多肉質で骨格をもたないが、骨片とポリプが吸い込んだ海水でからだをささえ、樹木状に成長する。羽根状の突起のある8本の触手を網のように広げて、流れてくるプランクトンを捕まえてエサにしている。テーブルサンゴのような硬い石状のサンゴと違い、群体が柔らかいことからソフトコーラルと呼ばれる。
ウミトサカ類はまた意外なところ、地上から見える防波堤の岸壁などにも着生する。今原さんの観察によると、1970〜1980年代は海の汚染がひどく、死滅する姿が珍しくなかった。ところが最近になって、ウミトサカが蘇ってきたという。海が回復してきた証拠なら嬉しい。
色鮮やかなウミトサカは、浅い海では目につきやすい。海の環境を知るバロメーターとしても貴重な生きものといえるだろう。

紀伊・白浜沼岸 水深20メートル


見事なグラデーション毒だから食べないで
〜派手な衣装で舞う ミカドウミウシ〜
牛の角のような触角を左右に張って海底をはうミカドウミウシ。そのものずばりウミウシの仲間。英名では(Sea slug)海のナメクジと呼ぶ。得体の知れぬ感じだが、その正体は巻き貝が進化の過程で、しだいに殻だけが退化した姿だ。
淡黄色から赤色、青色と変異に富んだ体色に加えて背面には、さらに赤、白の小斑紋が散在する。うす暗い海の底でも、まことに鮮やか。いかなる絵具を調合してみても、こんな見事なカラーグラデーションを再現することは不可能だろう。刺激を与えると舞い上がって遊泳するところから、スペインの踊り子「スパニックダンサー」の異名をもつ。

紀伊・白浜沼岸 水深20メートル


虫歯の予防に生きたブラシ
〜仲良き事は……〜
歯に物がはさまると、手が使えない魚は困るだろう。ところがよくしたもので、その難題をクリアしてくれる生物がいる。 

深紅の地に青い点が美しいユカタハタが大きな口を開けた。それを合図に、繊細な体を跳びはねさせて、口のまわりに乗っかったやつがいる。体長約2センチのベンテンコモンエビだ。このエビは、ハタの歯の間に残った付着物を食べる。学問の世界では、そのものずばり「クリーナー」と呼ばれる存在だ。 

貪欲で肉食性のハタは近づく小魚などを、まるごとパクリとのみ込む。だが、このエビは別だ。小さなハサミを使いながらこまめに動くとき、ハタはいっとき陶酔の表情さえみせる。